家族信託の注意点-損益通算禁止の規定について

複数の不動産を所有している場合で注意しなればいけないのが、損益通算禁止の規定です。
損益通算とは、簡単に言いますと、ある所得が赤字であった場合、別の所得が黒字であれば、黒字から赤字を引いて黒字を減らすことにより、納税額を減らすことです。

損益通算の禁止とは、例えば、次のような場合です。

  1. 信託財産としたAアパートは、台風による被害が発生し、修繕を行ったことにより、100万円の赤字となった。
  2. 信託財産としなかったBアパートは、空室も少なく、100万円の黒字となった。

仮に一切、信託をしていない状態であれば、Aアパートの赤字100万円とBアパートの黒字100万円を通算することができます。その結果、所得は差し引き0円となるので、課税されることはありません。

しかし、本事例のように、Aアパートだけを信託財産にした場合は、Bアパートとの損益の通算ができなくなるので、Bアパートの所得は、そのまま100万円の黒字となり、課税されてしまいます。さらに、Aアパートの赤字は、翌年以降の損失の繰越しもできないことになっています。

また、複数の不動産があって、不動産ごとに信託終了時の帰属権利者(受取人)を、別々の人にしたい場合などは、信託契約を複数に分ける場合があります。このような信託契約をまたいだ不動産の場合も、それぞれ損益通算ができないことになっています。

そのため、大規模修繕など大きな出費が明らかな不動産を信託したいが、節税を重視するのであれば、信託を行うタイミングを慎重に検討する必要があります(例えば、信託を行う前に大規模修繕を行い、他の不動産の所得と損益通算をして節税をしてから信託するなど)。

ただし、本人の判断能力の衰えによる認知症対策で家族信託を急いでいる場合は、認知症による資産凍結によるデメリットと損益通算禁止によるデメリットと比較した上で、どちらを優先するかを決める必要が出てきます。

家族信託の効力を最大限に発揮させるためには、上記の他にも、個々に応じて(家族関係、資産状況、実現したい内容など)、様々な検討事項があります。そのため、まずは司法書士などの専門家にご相談の上、進めていくことをお勧めします。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー