他の生前対策方法を加味して最適な方法をご提案

家族信託は、財産管理と資産承継という流れを1つの仕組みで実現できる画期的な制度ですが、次の制度を加味することにより、より最適な生前対策が実現します。

 

①遺言

家族信託の信託契約では、契約時点で財産を特定する必要があります。

もし、事情により家族信託で特定しなかった財産があって、その財産については他に何も対策をしないまま相続が開始すると、相続人全員で遺産分割の協議をして、その財産を取得する人を決める必要があります(ただし、法定相続分どおりであれば、協議をする必要はありません)。そこで、遺産分割協議で揉めることがないように、遺言を利用して、誰に相続させるかを決めておくことになります。

また、各相続人には、遺留分という最低限、相続できる財産の取り分が法律で保証されております。そのため、例えば相続人が複数いる場合、家族信託と遺言で1人だけに財産が偏らないような内容にすることが大事です。

例えば、母1人、子供3人(A、B、C)の場合で、母に相続が発生すれば、子供にはそれぞれ、総財産×法定相続分×1/2の遺留分があります。母の総財産が、6,000万円とすると、子供には6,000万円(総財産)×1/3(法定相続分)×1/2=1,000万円は、遺留分で保証されます。

母が家族信託と遺言で、Aに一番財産を渡したいと考えている場合は、B、Cの遺留分1,000万円ずつを確保した内容で作成するのがベストな設計となります。

イメージとしては、家族信託でAに3,000万円、遺言でA~Cにそれぞれ、1,000万円というようなものです(合計でAは4,000万円、BとCは各1,000万円が取り分となります。)

 

②任意後見制度の利用

家族信託を利用することにより、本人が認知症を発症しても、その後の財産の管理・処分は受託者により行うことが可能となります。しかし、本人の入院・施設入所・介護関係の手続きなど身上監護に関することは、家族信託の適用外となり、別途、成年後見制度の利用が必要となります。

成年後見制度は、大きく分けて、任意後見制度と法定後見制度(こちらがよく耳にする方です)の2種類ありますが、任意後見制度を利用しない間に認知症を発症すれば、法定後見制度しか利用できなくなります。

任意後見制度は、本人に判断能力がある間に、将来、認知症を発症したときに、任意後見人として生活を支える人を自分で選んでおくことができる制度です。
また、その人にお願いする内容も自分で決めることができます。

これに対し、法定後見制度は、認知症を発症した後の制度となりますので、本人の意向にかかわりなく、家庭裁判所によって後見人が選ばれることになります。

このことから、見ず知らずの人が後見人となる可能性がある法定後見制度と違い、信頼できる人を事前に選んでおくことができる任意後見制度を利用することによって、家族信託の適用外の身上監護の分野について、将来の不安を解消することができます。

家族信託以外に上記の生前対策を加味する必要があるかどうか、もしくは遺言や任意後見制度だけの利用で済むかの判断は、個々に応じて(家族関係、資産状況、実現したい内容など)、異なります。そのため、まずは司法書士などの専門家にご相談の上、進めていくことをお勧めします。

 

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