親が認知症になってしまえば、親名義の財産は凍結されてしまい、そのままでは、預金の引き出しや不動産の売却などができなくなってしまいます。
残る選択肢は、成年後見制度を利用して、成年後見人が財産を管理するという方法しかありません。しかし、成年後見人は、親の財産を守ることが大事な役目となりますので、必要最低限の管理・処分しかできなくなります。
そこで、そのような状況になる前に、家族信託を利用して、認知症による財産凍結を予防することが可能です。
活用例としては、認知症の発症の前に次のような信託契約書(必要箇所以外は割愛)を作成することになります。
①信託の目的 | 第○条記載の財産を信託財産として管理運用及び処分等を行い、受益者の安定した生活と福祉を確保するとともに、資産の適正な管理運用を通じて次代への円滑な資産承継を図ることを目的とする。 |
②委託者 | 父 |
③受託者 | 子 |
④受益者 | 父 |
⑤信託財産 | (1)所有不動産(自宅、アパート) (2)現金 |
⑥信託事務の内容 | (1)受託者は、自宅については、受益者の生活の本拠地として使用させる。 (2)受託者は、自宅、アパートについては、信託の目的に照らして相当と認めるときは、売却もしくは建て替えをすることができる。 (3)受託者は、受益者に生活費、医療費、施設利用費等を信託財産である金銭で給付する。 |
このようにしておけば、家族信託を開始しても、父は以前と変わらない生活をすることができます。また、その後に父が認知症を発症した場合でも、受託者である子は、信託財産の中から以下のようなことがすることが可能です。
- アパートを売却して、介護資金を捻出する
- 自宅をバリアフリーにするために、リフォーム契約する
- 税金対策として、アパートを建て替える
家族信託の効力を最大限に発揮させるためには、上記の他にも、個々に応じて(家族関係、資産状況、実現したい内容など)、様々な検討事項があります。そのため、まずは司法書士などの専門家にご相談の上、進めていくことをお勧めします。